欲しかったのは
あなたの
「ただいま戻りました。」
「お、おかえり。」
「……。」
部室に戻って来た古泉は
かけられた声に硬直する。
声をかけたほうが驚くほどにその反応は顕著だった。
「おい?」
「あ…すみません。」
もう一言かけると、硬直はとけたようで、
いつも通りの端正な笑顔が顔に浮かんだ。
「何だよ、オレなんか変な事言ったか?」
「いえ…違います。ただその…。」
珍しく言葉を濁す古泉の言葉を不審そうな顔で待つキョンに、古泉はふ、と笑いながら答えた。
「おかえり、と言われたのは久しぶりだったもので…つい。」
「…そ、か。」
その答えに少しだけ声をつまらせた。
キョンの表情の変化を見て古泉はまた少し笑みを深める。
ああ、やっぱり優しい。
本当は少しだけ嘘が交じっていた。
「おかえり」という言葉だけなら「未来人」や「神様」もかけてくれる。
だけどこんなにも反応してしまったのは、
彼の言葉だったから。
自分でも知らなかった。
あなたの「おかえり」が欲しかったんだ。
end
ちょっとほんのりあったかく?
「おかえり」は好きです。あ、わけわからん。
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